【NEWS 129】日本被団協のノーベル平和賞受賞に思う(田平啓剛)

1)ノーベル平和賞

 受賞の使命2024年のノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与された。長崎の被爆二世として、身の回りの人々の地道な反核反戦運動を子供時代からずっと見聞してきた私としては、この受賞を素直に喜んだ。近く開かれる在京の被爆者団体の「新春の集い」にも喜んで参加し、被爆80周年の節目の年、「長崎を最後の被爆都市に!」の決意を新たにする覚悟である。しかしながら、他方で、朝鮮半島情勢の暗転に、又、米国大統領に決してさせてはならなかったトランプ氏の再登場に、底知れないやるせなさと隔靴掻痒のもどかしさを噛み締めるばかりである。でも、立ち止まっていても、祈ってばかりいてもことは始まらない。惨憺たる物事は少しも好転しない。

 

2)ウクライナ戦線の戦況

 ウクライナ戦線のウクライナ軍は、緒戦に於いて、首都キウイに迫る侵略ロシア軍を領域外に叩き出した。しかし、その後も人命を湯水のように浪費してやまないロシア軍の人海戦術の前に、ウクライナ軍は東部各州でジリジリと後退を余儀なくされている。プーチン大統領へ差し出された金正恩総書記の北朝鮮兵1万2千人。彼らは本国に騙され、或いは洗脳され、「捕虜になる位なら自決を!」と強要され、更には本国の家族を人質に取られ、絶望的な状況で戦わされている。ロシア軍が自力では奪還できない自国領土のクルスク正面に投入されて、である。他方、2022年2月24日、ロシア軍の突然の侵攻開始以後、善戦に善戦を重ねてきたウクライナ軍には交代もなく、休暇もない。3年に及ぶ継戦に、士官も兵士も皆疲労困憊している。前線或いは後背支援国での兵士の集団離脱や逃亡事件が報じられ始めた。

 ウクライナへの最強最大の支援国だった米国も、民主党のバイデン大統領でさえプーチンの「核の脅し」に屈した。米政権は最新型戦車や戦闘機の供与遅延、長距離ミサイルの使用制限等々の足枷をウクライナに課し続け、「戦力の逐次投入」という戦術的愚行から抜け出せなかった。米国以外のNATO(北大西洋条約機構)加盟国からは、各国軍部隊のウクライナ派遣という掛け声は一時起こったものの、所詮は軍事超大国のロシアと独裁者プーチンの前では、単なる言葉遊びでしかなかった。

 

3)トランプ登場後のカオス

 まもなくトランプ大統領の第2期目の執政が始まる。嘗てプーチン・ロシア大統領を“尊敬”し、金正恩北朝鮮総書記に“恋をした”と公言した人物である。自らの政権をイエスマンばかりで固め、ヒットラー指向とも陰口される超危険人物である。大統領就任前から中国やロシアの影の脅威を吹聴し、片やデンマーク領グリーンランドの領有権譲渡を同盟国デンマークに要求。

 此方ではパナマ運河の米国への返還をパナマ政府に強要しようとする。又、高率の関税を振りかざしては、相手側に無理難題を吹っかけ、その譲歩を迫る作法は悪徳不動産ブローカーの手口そのものではないのか?更に悪いことには、彼はその掌中に世界最大最強の軍事力をも収めたのである。

 そもそも氏は諸々の刑事事件の被告人で ある。某ポルノ女優事件では有罪評決を受 けながらも、現職大統領職の故に「刑を科 されない」という極めて特殊な立場にある 。2021年1月の議会襲撃事件では、昨年11 月、氏の大統領選勝利を受けて、スミス特 別検察官が起訴の取下げを余儀なくされた 。しかし、本年1月14日、司法省は「裁判 で有罪を得て、それを維持する十分な証拠 があった」と明言する詳細な報告書を公表 。報告者の同元特別検察官は、トランプ側 の「極めて党派的、政治的、恣意的報告」 という批判に対し、司法省の良き久しい伝 統「中立、公正、独立」を以て応酬した。 トランプ氏のこうした一連の知性の欠缺の 裏には、金に飽かせた替え玉での学歴取得 という、若い時代の抑えられない噂もある 。

 

 同盟ではなく米国一国至上主義、大義や 道義よりも目先の利益、気候変動の危機に 直面している地球環境の保全とか国際協調 主義、人類全体の進歩と調和等々何処吹く 風!・・又、現時点に於いて、世界第二の 経済大国として擡頭する、やがては米国を も凌駕しようとする勢いの中国にこそ対抗 し、プーチン・ロシア大統領と蜜月を築こ うとしているやに見えるトランプ大統領 。・・このような男に率いられる米国と世 界を前にして、我々日本人、80年前、原子 爆弾の洗礼を受けた唯一の民は如何に生き 、どのように現在を未来に繋げていけばよ いのか? 今、直ぐには答えは見つけられない。しか し、只、立ち尽くすだけでは何も変わらな い。祈るだけでは、事態は決してよくなら ない。我々は、今こそ知恵を働かせ、叡知 を尽くして、行動に繋げるべきである。而 して、「世界恒久平和」への道を探り出し 北朝鮮難民救援基金NEWS Jan 2025 № 129 3 、「人類共存共栄」への困難にして固き門 をこじ開けなければならない、のである。

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