【NEWS 128】第3号議案 2024-2025年 活動方針

 

 昨年度は、コロナ禍で止まっていた活動が、活動報告にあるように、ようやく再度動き始めた。本年度は、財政的な限界はあるが、私たちとしてできる限りの活動を活発化させていく。

 

脱北者救援活動と定住支援活動

 

 脱北者の救援活動と定住支援活動は、引き続き要請があった場合に対応をしていく。近年では基金への脱北者の救援要請はほとんどなくなっているのが現状である。その原因は、いくつか挙げられる。

 一つは、北朝鮮ではまだコロナへの非常態勢が解除されていないことから、中朝国境の人的往来が依然として厳しく制限、監視されていることにより、北朝鮮から脱出することが困難であること。

 二つは、豆満江沿いのほぼ全域に背丈を超えるコンクリート塀を構築、有刺鉄線を設置塀した事情から、北朝鮮から中国に入境することが非常に困難になってきたことが挙げられる。

 一方で、近年の脱北者は外交官など北朝鮮のエリート層が多いことが特徴となっている。彼らは中国を経由しなくとも、海外から正規のルートで脱北できる環境にあることがある。

 また、中国国内に隠れて居住している脱北者は推定で最高20万人近くに上っていると言われている。彼らの多くは、中国人配偶者を得ているが、中国国内を自由に移動することに制限があるため、中国から第三国を経由して、韓国や日本などに渡ることが困難な状態に置かれている。

 しかしながら、彼らが韓国や日本に渡ることの希望を無くしているわけではない。いつ中国当局に捕まって北朝鮮に強制送還されるかもしれない危険性よりも、環境さえ整えられれば、第三国経由で韓国や日本に渡ることを選択し、そのための支援要請が基金に来る可能性は捨てきれない。

 また中国と北朝鮮の合弁会社で働く北朝鮮労働者は、合法的な身分で入国し、通常3の労働ビザを得ている。派遣労働者が合法的な滞在期間の終了間際に離脱する方法もあり、その働きかけを受けたこともある。

 基金としては、そうした事態に備えるための海外支援ネットワークを維持するとともに、加えて、日本に渡ることができた後の、定住支援の基盤についても、引き続き堅持していくこととする。

 なお、基金との長年にわたる協力関係を築いてきた韓国の脱北者支援団体には、現在も数は少ないが、脱北者からの支援要請がある。基金として、そうした脱北者支援団体に対する可能な財政的、人的支援を行う。

 

北朝鮮への情報注入活動

 

風船プロジェクトへの協力と支援

韓国の文在寅政権時代には禁止そして妨害されていた、韓国から北朝鮮国内に様々な情報を直接伝えるための風船プロジェクトは、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の就任によって韓国政府の方針が転換し、復活している。

基金は、風船プロジェクトを熱心に実施してきた北韓同胞直接助け運動・対北風船団長の李珉馥(イ・ミンボク)氏と協力して、日本側で作製したビラを北朝鮮に送る活動を進めていくことになった。

 実際に実行する日程は、李ミンボク氏が風向きを判断して決めるため、日本から予定を決めて参加することは難しいが、日程的に調整ができれば日本側からも準備段階から実施段階に参加できそうだ。

 

ペットボトルプロジェクトへの協力と支援

 風船と同様に、韓国の民間団体が、ペットボトルにビラや穀物の種子などを入れて、北朝鮮側の海岸に流れ着くような活動を進めている。基金としても、そうした団体と協力しながら、日本側で作製したビラを北朝鮮に送る活動を進めていく。

 実行する日程は、風船プロジェクトと同様に、潮流を判断して決めるため、日本から予定を決めて参加することは難しい。しかしながら、日程的に調整ができれば日本側からも参加するとともに、ペットボトルにビラなどを詰める作業のボランティアも募集する。

 

ミャンマー難民支援活動

 

 基金としては、昨年の総会において定款を変更し、脱北者だけではなく、広く難民への支援活動を行うこととした。そのため、2021年にクーデターが発生した以降、多くの難民が発生しているミャンマーに対して、人道的支援を行うこととした。

 具体的には以下の団体と協力しながら、ミャンマー難民支援を実施していく。

 

コミュニティ・スクール・プログラムへの協力と支援

 

 コミュニティ・スクール・プログラムは、ミャンマーのカレン州を中心として、ミャンマー国内の難民キャンプへの食糧・医薬品等の支援を行っており、タイのメーソットとメーサリアンを拠点とする現地のNGO団体である。基金として、これまでにも数回にわたって財政的支援を行ってきた。今年度においても、財政的に余裕ができれば、この団体の活動への財政的支援を実施する予定である。

 なお、昨年度に基金に支援要請があったミャンマー難民の保護と日本への渡航にあたって、現地において多くの協力を得たのが、この団体である。ミャンマーの軍事独裁政権下で路上の民主主義に参加した医療従事者をヤンゴンからタイ・ミャンマー国境まで誘導する役割も果たした。

 

特定非営利活動法人アジア児童福祉会との協力と支援

 

 特定非営利活動法人アジア児童福祉会は、中国国内の北朝鮮孤児のための収容施設を支援する団体から児童養護施設への財政、学習、教育支援活動を引き継いだ。中国吉林省延辺朝鮮族自治州の少数民族初等学校の理解と支援も得ることができた。少数民族学校の運動会行事の支援、朝鮮族教師の献身的な教育で子供たちは子どもの能力を伸ばした。村の責任者も児童養護施設の勤務員と良好な関係を結んで良好な協力結果を生んだ。無国籍の子どもたちが中国籍を受けて合法的な存在になったことは、子どもたちに中学校から高等学校への進学、大学受験を受ける資格ができたことを意味した。将来に希望を持った子どもの中には進学高校から有名国立大学に入学したのは私たちの誇りである。

 児童養護施設の運営は1990年代後半から2000年代前半まで続いた北朝鮮の食糧危機と飢餓の「苦難の行軍」の苦難を乗り越え、関係者を励まし互いに成長した好例である。

 しかしながら、中国政府は民間の団体が孤児を養育する方針を廃止し、省レベルの施設に運営権限を移管したため、児童養護施設は廃止された。

 そのため、特定非営利活動法人アジア児童福祉会は、現在、タイのナイソイにあるミャンマー難民キャンプでの学校施設整備、保育園の施設整備、あるいはタイのサンクラブリーにあるミャンマー難民で障害の者の福祉施設への支援などを実施している。基金としても、この団体と協力し合いながらミャンマー難民支援を実施していくものである。

 

北朝鮮映画祭への参加

 

 例年12月に実施されている北朝鮮映画祭に、本年度も参加する。なお、映画祭は実行委員会形式を採用しているため、基金も実行委員のメーバーとして参加する。

 

Ⅵ グローバルフェスタへの参加

 

 例年9月に開催されている外務省主催のグローバルフェスタに、本年度も参加する。参加する形態は、ブースでのバネル展示や参加者への解説などである。なお、2024年9月28日、29日に、新宿駅西口住友ビルの三角広場にて開催された。

 グローバルフェスタには、北朝鮮問題にも関心が高い高校生なども参加する。基金の活動について、学校などで社会教育、人権人道活動の実践例で教科の中の一部として取り組む可能性がある。高校生からの質問に答え理解してもらうのは自分自身を試す好機でもあり、参加する意義は大きいものである。

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