ミャンマー国軍(以下、国軍)が2021年2月1日にクーデターを起こして3年が経過する。状況は好転するどころか悪化するばかりである。
国軍はこれほどまでにミャンマー市民と少数民族が抵抗するとは予想をしていなかったようである。当初、国軍はクーデターによる政権掌握に、自信を持っていたが、その自信は打ち砕かれた格好である。
その目論見違いの原因は、第一に、ミャンマー市民の民主政治への意識の覚醒である。クーデター前の自由な政治活動を経験した市民の多くは、軍政への嫌悪感を強く持つようになった。実際、クーデター前のミャンマーの町の雰囲気は非常に明るく、活気に満ちていた。市民はカフェやレストランで、自由に政治を語り、明るい未来を夢見ていた。馴染みとなっていたレストランでアルバイトをしていた女子学生は、英語を学んで、将来はアメリカに留学したいと笑顔で語っていたことが思い出される。
その夢を国軍が砕いたのだから、市民の反発はかつてなく強いものになった。市民の中には、人民防衛隊(PDF:People Defense Force)に参加し、少数民族支配地域などで軍事訓練を受けたうえで、各地で国軍への抵抗活動を行うまでに至った。かつてのミャンマーであれば、クーデターに抵抗したとしても、市民がそれほどまでに国軍に抵抗することはなかった。
第二に、国軍や警察など、治安部隊の中に、クーデターに否定的な立場をとり、国軍や警察から離脱する人たちの存在である。彼らは、外国に亡命したり、国内に残ってPDFの要員となって活動を展開するようになった。PDFの勢力は、各地に分散しており、統一のとれた抵抗運動をしているとは言えないが、その存在は国軍にとって無視できない状況であり、国軍の攻撃の対象は、こうしたPDFの動きに合したものになっている。