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【News127】6年ぶりに対北風船飛ばし作戦を再開  (社)北朝鮮同胞直接援助運動 風船団長 李民馥

 対北風船飛ばしの中断は文在寅と金正恩の“4.27板門店宣言”からだ。北朝鮮同胞は後回しで、一握りにもならない統治者同士だけの宴会のためだ。対北ビラ禁止を初の首脳会談開催条件にした金正日の要求を受け入れた金大中政権の時もそうだった。そして核を開発しながら米ドルを持って来いと言った。民主化指導者という華やかさの中で、金大中の頭には、目と耳を覆われた貧しい北朝鮮国民はいなかったのだ。

 こうした政治を信じられず、脱北者として初めて対北風船を開発、試みたのが2003年からだ。この過程で最大の障害物が政府だった。北朝鮮と関係が良いときは対北風船を飛ばせなくして、悪いときは許したからだ。進歩政権はもちろん、保守政権もやはり五十歩百歩だった。人権、人道主義運動は、政治妥協の対象にしてはならないという原則的政策がないのだ。さらに北朝鮮対南工作部門でもできない「対北ビラ禁止法」が2020年に強行制定されたのが韓国政治の現実だ。

 一方、京畿道の李在明知事は職権を乱用し、資格証を有し国家認証を受けた合法風船であるにもかかわらず、違法だとして強制領置まで強行した。サンバンウルを通じて北朝鮮にお金を渡した事件が示しているように、北朝鮮に良く見せようという事なのだ。一方、北朝鮮スパイまたは従北分子は監視カメラ作動中にもかかわらず、風船飛ばしに使う車両に放火して廃車にさせられた。

2022年11月12日午前1:20頃、放火で全焼した5tトラック

 幸いにも昨年2023年9月に、「対北ビラ禁止法」は憲法裁判所で違憲の判決が出た。正義は必ず勝利することを示している。それでも残念なのは長すぎた禁止期間(6年間)だ。この間、政府に感知されずに飛ばすことができなかった。私には24時間6人の身辺保護刑事が付き、監視カメラ下にある2.5屯03と5屯のトラックを出せなかったからだ。

再開された対北風船を正確に飛ばす技術的問題に言及しよう。

 北朝鮮に届かなければ対北風船でない。韓国内に落ちたのを何度も見、あろうことか日本の新潟県沖に落ちた対北風船を見たこともある。対北風船に対する技術的理解なしに飛ばすからだ。もちろん詐欺師、扇動が目的の人たちには技術は関係ない。ただマスコミに乗って有名になり、お金を多く手にすれば良いからだ。実際、対北風船運動で技術的問題に先立つのは良心の問題だ。良心のある人たちは、本当に北朝鮮に飛ばすために学ぶ。

 対北風船を100%成功させるには、3条件が満たされなければならない。最初は風向、2番目は風船、3番目はタイマーが正確であることだ。

 

1.風向

 風船の動力は風力であり、到着地は風向が決める。最も正確な風向データは、スーパーコンピュータで計算された航空気象庁にある。航空気象庁の資料には高度別風向が示されている。気象庁資料は地上10mの風向だ。アマチュアはこの資料を見て風船を飛ばすので失敗が多い。対北風船は3000~5000m上空に滞空させて飛ばすのが定石だ。それ以上の高さではジェット気流などに巻き込まれてしまう。それ以上か下では乱気流が激しく、落ちる範囲が狭くなる。私の団体(社)北朝鮮同胞直接援助運動の対北風船は5000mを基準にしている。

 風船は、高度に応じて製作しなければならない。私の場合には、風船の長さの半分にだけガスを満たし、下を密閉しない。高度5000mの気圧は地上の半分だ。風船の下をしっかりと縛らないのは、気圧差で膨張して漏れ出るのを防ぐためだ。この原理を知らないアマチュアたちは、風船にガスをしっかりと入れ、また下をしっかりと束ねて飛ばす。このような風船は高空に達することができず、また遠く飛べずに破裂してしまう。メディアに出た最近の代表例は、江原道洪川の川沿いで発見された、金父子の大型写真が付いた自由北朝鮮運動連合(朴相学氏)の対北風船だ。

 正常な高さに達した対北風船は、実際に徐々に降下して来る。 0.03mm厚のビニール風船内のガスが徐々に漏れるからである。これを勘案して、政府機関が飛ばしていた対北風船は高濃度アルコールをつけて正常高度を維持させていたそうだ。

 資金力が不足している民間団体の私たちは、より効果的な方法を適用した。高価で、重さが加わる非効率な高濃度アルコールの代わりにビラ袋を短、中、長距離用にぶら下げるようにした。つまり風船の降下に合わせて短、中、長距離用が順番に落ちるようにタイマーをセットしたのだ。この技術は、正常高度を維持しながらもまんべんなくピラを撒きながら飛んで行くようにするものだ。米航空宇宙局の多段階ロケット技術と同様の原理のようで、ピラを落としながら飛ぶのにもっと効果的だ。

 

2.風船は無傷でなければならない。

 厚さ0.03mmのビニール風船は、軽く触れたり踏んだりしても傷が付く。傷付くと風船からガスが漏れ出て失敗する。だから、私たちは専門担当者以外には絶対風船に触れさせない。マスコミで知られている風船イベントでは多数者が風船を掴んでいるが、なぜ失敗するのか分からないのだろう。

 いくら専門担当者が注意して風船作業をしても傷付く風船がある。だから私たちはコンドームの試験をするように、予め風船にガス充填して吊るして置く。私たちの風船車の写真を見ると、何十もの風船がぶら下がっていることが確認される。ぶら下げた風船の中で傷付いたのはすぐに分かるので、それは飛ばさない。

 

3.タイマーが正確でなければならない。

 風向が合っているときに傷が無い風船を飛ばせば北朝鮮に確実に入る。しかし、タイマーが不良で動作しないと無駄になる。これを防ぐために、タイマー工場で3回繰り返し試験したものを購入し、また独自で検査合格したものだけを使う。先に指摘した風向、風船、タイマーが正確であれば100%成功した対北風船になる。

 

 

韓国で対北風船を合法的に飛ばすには、次のものを備えなければならない。

 そうでなくて事故が起きると違法、無保険処理を受ける。

 合法的かつ専門的な対北風船を飛ばすには、まず資格証所有、第二に国家認証装備を備えなければならず、第三には風船作業訓練を受けなければならない。

 

① 風船を飛ばせる資格証に従わなければならない。

 私のように風船特許証は無くてもよいが、資格証には必ず従わなければならない。韓国ガス公社で10日間教育を受け、試験に合格しなければならない。それなくして対北風船すればLPGガスを許可なく買って使う違法、安全破壊者のようになる。資格が無ければ、有資格者指導のもとで行えば良い。例えば、風船資格証を唯一所持する私の管轄下ですればよいということだ。

 

② 国家認証風船装備と車両を備えなければならない。

 風船ガスは可燃性圧縮ガスであり、火災や爆発の危険性が非常に高い。したがって国家が承認した装備と車両でなければ違法で危険千万である。本人だけでなく他人にまで深刻な被害を与えるということだ。一言でいい仕事をしようとして失敗する。

 

③ 風船訓練を必ず受けなければならない。

 一見すると風船飛ばしは面白くて簡単なようだ。そうでないというのは、河泰慶国会議員首席補佐官だったキム・ソンジュン氏が証言している。風船元祖の私から公式に学んで、対北風船を飛ばしたいと訪ねてきた方だ。真剣に3ヶ月間訓練を受けて、対北風船にGPSを最初に装着して飛ばした実行者でもある。しかし、直接対北風船飛ばしをして簡単ではないことを認め、対北放送だけに専念した。

 

 対北風船飛ばしをする人が多ければ多いほど統一と宣教に良いことだ。しかし、上記のような法と秩序、訓練、装備を備えるというのがそれほど簡単ではないのも現実だ。一人で全部はできない。それぞれができる範囲で力を合わせて活動して行かなければならない。

 

 

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