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【News126】「北朝鮮帰国事業高裁判決の画期的意義」北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会理事 山田文明

1. 東京高裁判決の喜び

 10月30日、東京高裁101号法廷で言い渡された判決は、この訴訟を提起した脱北者たちだけでなく、北朝鮮帰国事業(以下「帰国事業」)のすべての被害者にとって、また被害者救済に取り組んできた私たちにとっても「歴史的な日」でした。帰国事業は、北朝鮮政府が朝鮮総連と共に虚偽説明で北朝鮮に渡航させ、多大な被害を与えた不法行為であると認めたのです。

帰国事業の被害を訴えてきた私たちが、法廷でこの判決を直接聞くことができたのは、30年近い運動の中で初めて真に喜べる「達成感」でした。

 

2. 東京地裁判決の成果と問題

 東京地裁判決は原告の訴えを「除斥期間」の経過や「裁判管轄権」を理由に認めませんでした。しかし、判決の中で、北朝鮮政府が朝鮮総連を使って虚偽の説明で北朝鮮への渡航を決断させた事実、および北朝鮮渡航後は出国を認めず、「帰国した原告らを強制的に北朝鮮内に留め置いた」事実を認定しました。これだけでも、帰国事業に関する一つの司法判断として大きな意義がありました。

問題は、地裁判決が原告主張の「不法行為1 国家誘拐行為」を、原告らに北朝鮮への帰国の意思決定をさせた「勧誘行為」と、北朝鮮に渡航した原告らの出国を認めず、北朝鮮内に留め置いた「留置行為」に2分割し、「勧誘行為」は「除斥期間」の経過によって訴える権利は消滅し、「留置行為」は日本の裁判所に管轄権がないと判断したことです。

この2分割論は、原告らを北朝鮮へ渡航させた行為を北朝鮮政府の行為とは見なさず、「勧誘し、渡航させ、留置した」国家誘拐行為から「渡航させた」行為を除き、原告らが自分で北朝鮮へ渡航していったものと見なしたことから生じた大きな誤りです。

また原告主張の「不法行為2 出国妨害行為」は、脱北して日本にいる母親が北朝鮮に残る子や孫と面会交流する権利を侵害されているという主張です。地裁判決は、出国する権利を侵害されているのは北朝鮮にいる子や孫であり、日本の裁判所には管轄権がないと判断しました。

 

3. 北朝鮮帰国事業の全体像を直視した東京高裁判決

 

 東京高裁判決は、地裁判決が2分割した判断を否定し、1つの継続的不法行為であると判断しました。「事実と異なる情報を流布して北朝鮮への帰還(移住)を呼びかけて、日本から北朝鮮に渡航させ、渡航後は出国を許さずに在留させることにより、…略…継続的不法行為の客観的事実関係の証明がある」と判断しました。この判断の結果、「除斥期間」の経過は未だなく、裁判管轄権も加害行為が行われた地であり、その結果発生地でもある日本に管轄権があると述べ、被害者救済への扉を大きく開くことになりました。

さらに「不法行為2 出国妨害行為」についても、「これを含めた全体を1つの継続的不法行為ととらえるのが相当である」と判断し、「不法行為1」と「不法行為2」を含めた全体が一つの継続的不法行為であると主張しました。

 

4. 帰国事業の検証と被害者救済へ

 北朝鮮帰国者の身に生じた被害について、未だ広く「自分の意思で帰国した自己責任」論がありますが、高裁判決は北朝鮮政府の不法行為の被害者であると明言しました。この判断を真摯に受け止め、日本政府、日赤、政党はこれまでの見解を検証し、被害者救済に一層の努力を期待します。

 

(10月30 日、帰国事業裁判の東京高裁控訴審で勝訴した原告と弁護団)

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