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焦りか見栄か? 金正恩氏が「熾烈な徹夜戦で200日で総合病院作れ」と無 茶 コロナ肺炎で医療の落伍認識か

アジアプレス 石丸次郎 2020.03.21

 

◆国境封鎖で経済深刻なのに

 金正恩氏は、3月17日に行った演説で「平壌総合病院を労働党創建記念日の10月10日までに完成させよ」と述べた。労働新聞など官営メディアが18日に伝えた。期日まで約200日しかなく、工事に相当な無理が強いられることになる。

 金正恩氏が演説を行ったのは、平壌総合病院建設の着工式。この場で金正恩氏は、シャベルでの砂入れと発破をして見せた。

 演説の中で金正恩氏は、今年度に計画されていた多くの建設工事を先に延ばし、病院建設を優先せよと厳命した。

 国際社会の経済制裁に加えて、新型コロナ防疫のために国境封鎖に踏み切ったため、北朝鮮経済は深刻な状態にある。観光地開発や発電所建設など、当初予定した国家プロジェクトの中から「選択と集中」せざるを得なくなったと見られる。

 また、1月下旬から始まった新型肺炎の世界的流行の過程で、北朝鮮の医療・保健体制の劣悪さが国際社会から度々指摘され、金正恩氏自身も自国の落伍した実態を痛感し、「社会主義先進医療」の目玉として宣伝効果が期待できる平壌の大型病院建設に踏み切ったのだろう。

 北朝鮮の医療・保健の実態を考えると、切実なのは、見栄えの良い大型病院建設ではなく、地方

の病院、診療所の老朽化した設備の更新、上下水道の整備などのはずなのだが。

 

◆金正恩氏の「お言葉」は絶対貫徹

 17日の演説での金正恩氏の発言は、無条件貫徹を求める厳格なものだった。公表された演説文の中からいくつか挙げてみよう。

 「われわれは、どんなことがあっても一日も早く平壌総合病院の建設を立派に完成して、病院が人民を迎えるようにしなければなりません」

 「急を要するからといって施工の質を落としたり、質を高めるからといって速度を緩めるのはいずれも党の思想と要求に反すること」

 「忠誠の突撃戦、熾烈な徹夜戦、果敢な電撃戦を繰り広げるべきです」

 着工式に臨んだ金正恩氏の背後には、15階建てほどに見える病棟2棟の「完成予定俯瞰図」がかけられていた。この大型工事をわずか200日余りで、昼夜分かたずの突貫工事で完成させよというわけだ。

 

◆民衆に過酷な負担を強いる結果に

 北朝鮮において金正恩氏の指示・命令は絶対である。それを執行できないと、側近、大幹部たちも政治的な批判にさらされ、場合によっては左遷、粛清に及ぶこともある。

 ゆえに幹部たちは、下級の組織・幹部に無理難題を押し付ける。彼らも批判が恐ろしいので、さらに下部に無理強いするということが繰り返されてきた。

 今回の突然の平壌総合病院建設でも、資金、資材の調達と労力動員で、民衆に過酷な負担を強いる結果になるだろう。

 

 

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