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【現地検分調査報告】五能線沿線に漂着する北の漂流・漂着船激増 加藤博

 北朝鮮からと見られる木造船の日本海沿岸への漂流、漂着の件数が激増している。海上保安庁の調べによると2013年度からの5年間で372件であると報告している。乗組員とみられる遺体は77体、生存者は19人にとどまった。漂流漂着の件数は2013年度87件、14年度44件、15年度61件、16年度50件、17年度130件。漂着が確認されたのは13道府県、新潟(80件)、石川(72件)、秋田(34件)、青森(24件)、島根(23件)の順で多かった。漂着船の背景、今後の見通し、対応などについての分析調査が必要とされている。

また北朝鮮による拉致の疑いの濃い失踪者の問題を調査する「特定失踪者問題調査会」の主催する現地検分、調査活動が3月20日、21日の両日青森県弘前市を中心とする五能線沿線でおこなわれた。北朝鮮難民救援基金はこの地域に集中して起きている漂流船、難破船、及び生存し上陸する北朝鮮人乗組員に注目している。「調査会」が現地で検分調査する機会に参加を申しこみ、同意が得られたので、その結果と合わせて報告する。

 

青森県に24件の漂流・漂着船 男性2人保護「北朝鮮から来た」

 1月13日深浦漁港の西1.5キロ沖で木造船が漂流しているのを漁師が見つけ、漁協を通じて青森海上保安部に通報した。男性2人が乗っており保護された。2人は「北朝鮮から来た。帰りたい」「エンジンが故障し、漂流していた」

 2人は昨年12月中旬に北朝鮮を出港し、沿岸で漁をしていたと説明。出航時5人いたが、荒天で船が揺れて3人が海に落ちて行方不明になった。船に食料はほとんどなく2人の身分証や国籍を示すものは見つかってない。木造船は自力航行不能状態で海保が2人を保護した。

 以上のような例が、青森県では24件であったことが分かる。中には漂着し転覆した船から遺体が発見された例もある。

舳先に一人、後尾に一人の男性が映っている
舳先に一人、後尾に一人の男性が映っている

 

外貨獲得のため漁業権を中国に売り渡した

 漂流する木造船そのものが川や湖沼向きで大目に見ても北朝鮮沿岸地域での漁業向きで、外洋まで出て漁をする船の構造ではない。

にもかかわらず、漁獲を求めて沿岸から遠く離れて漁をするので問題が起きる。

北朝鮮は、外貨獲得のために漁業権を中国に売り渡しているために、より遠くまで漁に出ることを余儀なくされている。また北朝鮮の水産事業部が中国の水産会社との契約で、中国の鉄鋼船をチャーターする形態をとり、北朝鮮国旗を掲げて好漁場の大和堆付近に母船として出航している。その周りに木造の子船を連れていることが考えられる。

 母船から水、食料、燃料を得て代わりに漁獲を売り利益を得る方式を取っている。そのために数カ月洋上暮らしをする漁民も少なくない。

北朝鮮の木造小舟が使うエンジンのディーゼル燃料の質が悪く、たびたびエンジンの故障が漂流の原因になっている。

 出漁する木造漁船では、海流が複雑に変化し、ある地点からは能登半島に向かう潮流があるというのが常識となっている。

北朝鮮の国内の経済状況の悪化が進めば、中国と契約を結んだ北朝鮮国旗を掲げた船が、木造小舟を使った「難民ビジネス」に転ずる悪夢もないわけではない。

 

現地検分・調査について

この地域が1962年の「鰺ヶ沢事件」から、1975年「濁川事件」まで北朝鮮工作員の密出入国が頻繁に繰り返されている地域であることが確認されている。また「韓国・鬱陵島間諜事件」で明らかなように韓国と日本の間で密出入国事件も頻繁におきていた。

 また、この地域で北朝鮮による疑いの濃い失踪事件も1965年から1985年まで10件発生し、未解決である。

 

失踪50年ぶりの手がかりの発見 

農業土木の設計図の書き方で分かる

 今回の現地検分で、北朝鮮に拉致された疑いが濃いとされている「特定失踪者の今井裕さん(失踪当時18歳)」が自分の高校の生徒手帳の中にメモ書きの地図を残していることが分かった。

2月に兄の英輝さんが、裕さんの持ち物を整理している時に手帳の間に挟まったチラシの中に見つけた。地図は深浦町の五能線の艫作(ヘナシ)駅周辺を描いていることが判明した。50年ぶりの発見だ。調査団が地図に基づいて実地検証をした結果、駅周辺の艫作崎の部分と合致することを確認した。

 今井さんは弘前工業高校で農業土木を学んだ。卒業式の前々日1969年3月2日夕刻「制服のボタンを買いに行く」と自宅を出たまま行方不明になった。高校の卒業を2日後に控えていた。東京の営団地下鉄に就職が決まっており、卒業式では成績優秀者であった裕さんが答辞を読むことになっていた。失踪する前日に秋田県にいた英輝さんを訪ねた際、行くところがあり会う人もいるため弘前に帰るーと告げていた。どこに行くか、会う人が誰なのかは言わなかったという。

生徒手帳の中にあったメモ書きの地図
生徒手帳の中にあったメモ書きの地図

 見つかった地図は、海が塗りつぶされ、断崖を示す場所の表示の仕方は農業土木に従事する専門家の描き方になっている。上下に線路が走り、駅らしい所に「HS」と書かれている。これは「Henashi」または、「Henashi Station」の略語ではないかと見られる。灯台や船のようなもの、海へ延びる道も描かれている。

 英輝さんはこれまで弟の生徒手帳を見ることがなかったので、50年間近く地図の存在に気付かなかった。「弟は深浦から北朝鮮に渡ったのでは」「筆跡が弟のものとは違う」とも指摘している。

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コメント: 4
  • #1

    e (木曜日, 16 5月 2019 14:21)

    UeeC9sbi

  • #2

    e (木曜日, 16 5月 2019 14:21)

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  • #3

    e (木曜日, 16 5月 2019 14:21)


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  • #4

    e (木曜日, 16 5月 2019 14:22)

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