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北朝鮮:政府関係者による女性への性暴力 HRW報道発表

北朝鮮:政府関係者による女性への性暴力

権力を逆手に暴行やレイプを働く男たちが処罰されない実態

 ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の報道発表

英語オリジナル: https://www.hrw.org/news/2018/10/31/north-korea-sexual-violence-against-women-officials

日本語リリース: https://www.hrw.org/ja/news/2018/11/01/323801

 

(ソウル、2018年11月1日)— ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で、北朝鮮当局者が処罰をほとんど心配することもなく、性暴力を働いていると述べた。政府は被害の告発を捜査・訴追しないうえ、被害者に保護やサポートも提供していないばかりか、北朝鮮は性差別や性暴力とは無縁だとさえ主張している。

 

報告書「『夜に涙は流すが、理由はわからず』:北朝鮮の女性に対する性暴力」(全86ページ)は、同国であまりに一般的なため、日常の一部とみなされつつある望まない性的接触や性暴力について調査・検証したもの。権力を持つ政府関係者が女性を「選ぶ」が最後、セックスや金銭ほか、求められることに応じる以外、女性に選択はないと多くの北朝鮮市民が証言する。聞き取り調査に応じた女性たちによると、加害者には政府高官や刑務所・収容所の看守、捜査官、警察官および秘密警察官、検察官、兵士などが含まれる。社会的な恥と報復を恐れ、救済措置を求める北朝鮮女性はいたとしてもごくわずかで、そのほとんどが性的虐待を届け出ることはない。

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表は、「北朝鮮における性暴力は対処されずに未解決のまま、広く容認された秘密だ」と述べる。「北朝鮮人女性も、何か法の裁きを模索する方法があると思えれば、おそらく『Me Too』と声を上げるだろうが、金正恩独裁政権の下では沈黙せざるを得ない。」

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、金正恩氏が権力の座についた2011年以降に脱北した54人の北朝鮮人と、北朝鮮から逃れた元北朝鮮当局者8人に聞き取り調査を行った。元被拘禁者または元囚人8人が、警察および秘密警察(国家保衛省)に所属する捜査官や拘禁施設職員、刑務所の看守による性暴力、口頭による嫌がらせ、屈辱的な取扱いを経験したと訴えている。露天商をしていた21人の女性も同国を仕事で移動している際に、警察や役人から性暴力や望まない性的搾取を受けたと語った。

 

1990年代後半から、国営の職場に勤務すること義務づけられていない既婚女性の多くが商売をはじめ、一家の稼ぎ頭となった。しかし、性差別や女性の従属が蔓延する同国で、仕事をめぐる性暴力の危険にさらされている。

 

2014年に脱北した両江道出身の40代で、かつて北朝鮮国内で露天商をしていたオ・ジョンヒ(Oh Jung Hee)さんは、いくどとなく受けた性的暴行について次のように証言する。「市場の警備員や警察官がその気になれば、私に市場の外の空き部屋かほかの場所についてくるようにいうんです。彼らは私たちを[性的な]おもちゃとみなしています。私たち[女性]は男たちのなすがままなんです。」あまりに普通のことになっていて、男性は過ちを犯しているとは考えておらず、女性もそれを受け入れるに至っていたという。しかし、「時々、夜ふと涙を流すことがあり、それがどうしてなのかもわかりませんでした。」

 

こうした問題の原因には、社会に深く根づく深刻な性格差のパターンや性教育の不在、性暴力に対する認識の欠如などが一部にある。そのほかの要因としては、監視の目がない権力の濫用、社会経済的な変化で悪化した腐敗、法の支配の欠如、性暴力の被害者に対するスティグマ、社会的支援と法的サービスの欠如などがあげられる。

 

2014年に脱北した咸鏡北道出身の30代で元露天商のユン・ミファ(Yoon Mi Hwa)さんは、中国に脱出しようとして2009年に清津市の拘留所に収監されたときのことを詳述した。

 

毎晩、複数の女性が看守と一緒に去って、レイプされます。とりわけ恐ろしい警察官が1人いて、あとで分かったのですが、残酷な仕打ちで有名でした。毎日新しい人たちが到着するたびに、そのうちの1人に言いがかりをつけてひどく暴行してみせます。それで皆、彼には従わなければならないのだと思い知らされるのです。 

 

彼女は続けて…

 

カチャ、カチャ、カチャという音が、私が今まで聞いた中で一番恐ろしい音でした。それは私たちの房の扉の鍵が開く音です。毎晩のように看守が扉をあけます。私は気づかなかったかのように静かに立ち、看守についていかなくてはならないのが私ではありませんように、その男が彼ではありませんようにと祈りました。

 

2011年に2度目の試みで脱北した両江道出身の40代で、元農民のパク・ヨンヒ(Park Young Hee)さんは、1回目の試みのあとの2010年春に中国から北朝鮮に強制送還され、秘密警察から身柄を咸鏡北道茂山市近くの地元警察に引き渡された。近くの公判前拘禁施設で尋問した警察官は、彼女の陰部に触れ、指を数回挿入したという。その際、中国滞在中に売られた先の中国人男性との性的な関係について、何度も聞かれた。彼女はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、「私の運命はすべて彼の手中にありました。だから彼の求めにすべて応えたんです。ほかに何ができたでしょう。[中略]北朝鮮では、私たちのすることすべてが違法とみなされる可能性があります。だから、すべては暮らしを調べる人間の認識や態度に左右されてしまうんです。」

 

北朝鮮政府は性暴力問題を認め、警察、検察、裁判所が性暴力を犯罪として扱うことを保障し、適宜かつ速やかに捜査・訴追を行うべきだ。また、リプロダクティブ・ヘルスおよび性教育プログラムを確立し、カウンセリングや医療・法的援助、そして女性がスティグマを克服するための支援プログラムといったサービスを被害者に提供しなければならない。

 

また、2014年の「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」は、北朝鮮政府の体系的かつ広範かつ著しい人権侵害が人道に対する罪に該当すると結論づけている。これには強制人工妊娠中絶、レイプほかの性暴力、ならびに北朝鮮市民の殺害、投獄、奴隷化、刑務所あるいは拘禁施設における拷問なども含まれる。調査委は、証人たちが「女性に対する暴力は家庭にとどまらず、公共の場で女性が暴力をふるわれたり、性的暴行を受けるのは普通のこと」であると明らかにしたと述べている。

 

ロス代表は、「家族を養うために外で働いている間に、北朝鮮人女性たちが政府関係者や役人にレイプされるという危険に向き合わなければならないようなことがあってはならない」と述べる。「金正恩委員長と彼の政府は問題を認めて女性を保護し、性暴力の被害者のために法の裁きを確保すべく早急に手を打つべきだ。」

 

本報告書「『夜に涙は流すが、理由はわからず』:北朝鮮の女性に対する性暴力」はこちら:

https://www.hrw.org/node/323617

 

 

 

 

 

 

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