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ICANのノーベル平和賞受賞に寄せて

核禁条約とICAN
昨年7月7日の国連で核兵器禁止条約が採択され、同年12月10日のICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のノーベル平和賞を受賞された。世界の絶対多数派を占める無力な非核保有国や、世界101ヶ国468NGO等が参加する権力無き国際NGOの快挙に、世界は勇気づけられた。

核兵器は必要悪として、永い間、国際社会は現実の厳しい国際政治情勢の前に妥協していたからである。9ヶ国まで増えた核武装国、その内の最強国・米国の「核の傘」の下、核抑止論を唱え、核禁条約への署名も批准も行わない日本。「何処の国の総理か?」と広島の被爆者から罵声を浴びた安倍首相。NPT(核不拡散条約)等で核保有国との橋渡し役を演じようとし、「核抑止と核軍縮は相反するものではない。日本政府は違う道筋で核廃絶を目指す」と嘯く河野外相。

しかし、20年以上日本が国連で主導してきた核廃絶の決議案に賛同する国は、今秋、11ヶ国も減った。上記の経緯を踏まえ、日本が核保有国の代弁者と見られたからではないのか?

ICANを巡る人々の発言
核禁条約とNPTとの相互補完を目指すICANは、前者の2年以内の発効を目標としている。「核兵器廃棄の過程を示すのが核禁条約。北朝鮮の核があるから入れない、との主張は逆」と説明する川崎ICAN国際運営委員。「核禁条約を確実に発効させ、核保有国も加盟せざるを得ないような国際世論を」と呼び掛ける田中日本原水爆被害者団体協議会代表委員。「核抑止は最早適当ではない」と繰り返すフィンICAN事務局長。

平和賞授賞式で講演をしたカナダ在住の被爆者サーロー節子さんは、「ICANと語り合わず、核禁条約の交渉会議にも出席せず、何で橋渡しができますか?」と断じ、しかし、「私達の情熱であり、誓いである光に向かって這って行け。決して諦めるな!」と、世界の人々に核廃絶の実現を訴え、改めて各国のリーダー達の協力や行動を求めた。

「北」囚人の勤労動員と住民の健康被害
翻って、北朝鮮におけるおぞましい核開発の状況に想いを馳せてみる。そもそも「北」の核武装は世界のNPT体制に真っ向から挑戦するもので、その為、核実験実施の都度、国連安全保障理事会によって累次厳しくなる一方の経済制裁決議が繰り返されるのである。「北」としては、正に核抑止論に従い、自国の生き残りと対米報復の為に、本来、国民の福利に廻されるべき貴重な人材・資源を、核ミサイル研究開発や実戦配備に専ら投入している。

他方、政治犯収容所の囚人達は保秘を要する地下核実験場の建設・整備に勤労動員されるが、それでなくとも低水準の安全意識や安全基準の為、人命の損失は目を覆うばかり、と噂される。更に、今や核実験場として著名となった豊渓里周辺の住民に現れている、放射能汚染による不気味な健康被害。これも住民無視の極めて低レベルの安全意識や安全基準の為、被害者の今後の続出や拡大が懸念されるところである。

核兵器は絶対悪
平昌冬季五輪への「北」代表団参加で、一息吐いた感のある朝鮮半島危機であるが、底流は変わらない。米朝間に一旦戦端が開かれることがあれば、核保有国同士の衝突であり、何が起こるか判らない。通常戦力であれば、圧倒的に優勢な米韓連合軍が短期間で、或いは短時間で決着をつける、と大方の軍事専門家が予測している。

が、キロトン級の原爆であっても一都市を、メガトン級の真正水爆となれば関東全域(東京中心部で空中炸裂した場合)を一瞬にして潰滅させる。その痛ましい惨禍は、広島・長崎の被爆者達が72年余、営々として語り継いできたとおりである。又、報復を怖れない狂信的なカルト集団、或いはテロリスト集団が戦術核兵器を入手したら、核抑止論等には関係なく、彼等は躊躇なく起爆させるだろう。

原子爆弾出現後、72年余を経た今、核兵器は絶対悪なのである。我々は国家の一員としての立場を超え、より高みの人類の一員として覚醒しなければならない。そして、何よりも日本政府に目覚めて戴きたく、力を尽くして働き掛けて行きたい。「世界を救うのは、外でもない我が愛する祖国、日本ではないのか!」と。

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