麻生太郎・副首相兼財務大臣へのお願い文を麻生氏宛てに発出しました

-9月23日宇都宮市での講演会の発言に関して-「先ずは「難民」救済!」私達は「北」の無名で弱い立場に置かれている民衆の側にこそ寄り添いたい

 

麻生氏発言「(北朝鮮からの難民は)武装難民かもしれない。警察で対応できるか?

自衛隊、防衛出動か?じゃあ射殺か?真剣に考えた方がいい」に対してお願い文を発出しました。

 

 

 

平成29年9月27日

           麻生太郎・副首相兼財務大臣へのお願い

―9月23日宇都宮市での講演会の発言に関して―

北朝鮮難民救援基金・副理事長・田平啓剛

 

 

一)平成29年9月23日、宇都宮市に於ける貴殿講演が全国に波紋を広げています。即 ち、貴殿の発言、「(北朝鮮からの難民は)武装難民かもしれない。警察で対応できるか? 自衛隊、防衛出動か?じゃあ射殺か?真剣に考えた方がいい」云々。

 対して、翌24日、左派系団体や識者らが猛反発し、ツイッターで非難する声が相次い だそうです。曰く、「これまでの麻生氏の失言とはレヴェルが違い、次元が違う。実に 由々しい難民忌避であり、ヘイト発言である。責任ある政治家として、決してあるまじき 煽動である」云々。 

 

二)これらを受け、更に麻生氏擁護の声もネット上に溢れたそうです。「治安維持に見識 のある政治家の発言」、「最悪の事態を想定していることを伝えたに過ぎない」、また、「テ ロリストたる武装難民を放置する訳には行かない」云々。

 麻生氏は、北朝鮮有事の際、日本に上陸する難民について国会で対策を講ずるべきだ と、従前から問題提起している政治家のひとりである、と認識しています。

 治安官庁の一員である法務省、その一角を占める元入管 OB のひとりとして、麻生氏の 視点も一定程度、評価せざるを得ません。

 

三)しかしながら、世界中で最も不幸な難民のひとつ、北朝鮮難民の本当の姿に想いを馳 せて欲しいのです。世界中の至る所で、昔も今も悲惨な難民の発生は止まることがありま せん。彼らは多かれ少なかれ受入国に摩擦を引き起こし、人道先進国たる欧州や米国等々 でさえ、排外主義的・自国第一主義的な機運を呼び起こし、「人類の進歩」という命題 に、深刻な疑問を突きつけています。

 が、その前提となる「脱出」さえ、「北」難民には認められていません。あの電力事情 の極端に貧弱な「北」に於いて、国民全体が囚人であるかの如く、一般民衆の脱北を阻止 する高圧電流配電の鉄条網が、中朝国境線全域に亘り張り巡らされようとしています。他 方、飢餓を逃れ、生命を繋ぎ、自由を求めて脱出して来たに過ぎない彼らを、今や堂々た る GDP(国内総生産)世界第二位の超大国・中国が、人権諸条約を批准済みにも拘ら ず、今も違法な「密入国者」として取り締まり、強制的に「北」への送還を繰り返してい るのです。

 

 しかも、その「北」は、一衣帯水の日本海を隔てた私達の隣国なのです。

 

四)私達は72年前、世界五大強国のひとつ、世界三大海軍国のひとつとして君臨してい た戦前の日本から訣別し、世界を道義的にリードする人権人道国家として、新たな再生を 誓ったのではないでしょうか?

 我が国では、折しも、全く大義の認められない総選挙に突入しようとしています。「難 民」救済は、本来、政党間の主義主張を超えて、国民の総意として実行されるべき国家的 一大事業ではないのでしょうか?

 翻って、普通の平凡な人間として、善良な一隣人として、近所に困っている人がいた ら、自分の力の及ぶ範囲で、そんな人々に自然に手を差し伸べる。それが分別のある大人 として、当然の対応なのではないでしょうか?

 私達はあくまでも、「北」の無名で弱い立場に置かれている民衆の側にこそ寄り添いた い、と考えています。「武装難民」の選別、排除は、「先ずは「難民」救済!」の後のこと であるべきであるし、そもそも「武装難民」とされる軍人達は、真正の難民の波の中では 必ず浮き上がってしまうものだと確信します。

 

 以上、貴職の潔い猛省を促すとともに、貴職の高邁な指導力と影響力を駆使し、広く日 本国民一般の啓発と教養に力を尽くされることを、切にお願い申し上げます。

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